ゴーン事件の概要

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2021年4月8日木曜日

事実の概要 (5)



100億円訴訟の意味

日産の株主には申し訳ないが、筆者はこの報道を聞いて、噴飯した。ゴーンは日産が2年以内に倒産すると公言している。事実、株価はクーデター事件以来確実に長期低落傾向にある。これはトヨタが上昇傾向、ホンダでも横ばい状態から見れば明らかな危険信号である。国民は100億円訴訟といってもピンとこないだろうが、大事なことは、100億円の売掛代金の回収等の確実な債権ではなく、不法行為や善管注意義務違反を理由とする取締役の責任追及訴訟であることである。本体の背任事件ですら、検察と裁判所は回避するのに汲汲としており、別動隊が背任の責任を追及するということがいかに馬鹿げているかは一目瞭然である。

本当に企業の行為として馬鹿げているという意味は、本件訴訟は結審までに5年10年かかり、その間に、日産そのものが消失し存在しなくなる可能性が大であること、つまり、代理人弁護士に着手金として一人3億円、弁護団5名として15億円の着手金を当初に出費することである。その後、年間経費を出費しても、勝訴の可能性は全くない訴訟である。

会社法訴訟で、役員に対する損害賠償請求訴訟は非常に困難で難解である。それは会社の行為が取締役会の承認に基づいており、よほどのデタラメワンマン経営者でない限り、会社に対する損害を一人の代表取締役の責任と認定することが困難だからである。この訴訟を引き受ける弁護士は会社法を知らないのではないかとさえ断言できる。

2021年4月7日水曜日

事実の概要 (4)

 

人質司法の失敗

強制的な自白の獲得に失敗した検察にはもはや有力な証拠は何もない。

人質司法は言い換えれば自白中心裁判である。検察はこれに失敗したので、ゴーンを有罪にする有力な証拠を持たないから、裁判の結果は見えている。ここで検察官と裁判官が採る方法は、可能な限り裁判を長期化することである。

既にその兆候は現れている。逮捕起訴して1年3か月にもなるのに、第一回公判期日さえ指定されていないのである。期日指定が遅延している理由は、驚くべきことに、審理を迅速に効率よくするための制度である筈の公判前整理手続きにおいて、検察が司法取引に関する証拠開示を拒否し、抵抗し、それを裁判所が容認しているためである。検察は自己の利益のためなら、迅速裁判のために法が定める事前整理手続きであっても、公然と蹂躙無視するのである。

脱出事件の悪用

弁護人選が選任されていれば、被告人出頭不能でも公判手続きは開始しなければならない。

裁判所が期日指定を遅延している最中にゴーンの国外脱出事件が起こった。弁護人が選任されているから、被告人の法廷出頭不能が起こっただけである。刑事訴訟法は明文でこの場合でも公判手続きができることを規定している(法286条の2)。それにも拘わらず、裁判所は無意味な公判分離手続を取った。明らかにゴーンの裁判を一時停止又は公訴棄却するものと思われる。そうなれば、完全な憲法違反であり、刑事訴訟法違反となる。

煙幕作戦

検察は国民の関心を目先の事件に誘導した。

検察は実効性のないICPO手配を乱発し、自ら、自縄自縛のアリ地獄に落ち込んでいる。ICPO手配は加盟国の平等主義と世界主議の理念のもとに運営されており、検察が国内向けのポーズや煙幕作戦として利用すれば、手痛いしっぺ返しをうけることを知らないでいる。先ず第一に被手配者の裁判地の合意を40日以内に合意することを求められている。被手配者が日本人でなければ、当然の手続であり、ここで頓挫することは明白である。第二に、被手配者から国際手配の取消請求を受けるだろう。本気で罪の処罰を考えているなら裁判地に拘る理由はないから、合意の拒否は不誠実そのものと評価判断される。

2021年4月6日火曜日

事実の概要 (3)


司法取引法理

あり得ない共犯、自称共犯の疑惑

日本の司法取引法は検察官司法と批判されてきた日本の刑事司法の本質的欠陥が見事に露呈した法制度である。充分な論理的検討が全くされず、検察の検察による検察のための制度となっている。

協力合意成立の時期は決定的に重要である

共犯事件において、公訴提起後であれば、裁判官の目もあり、弁護人の目もあるから、共犯者の一人が他の共犯者の不利益証言、つまり敵性証人となっても問題はない。検察官も協力合意形成の過程を開示するのに躊躇は何もない。この場合、協力合意者は被告人と呼ばれる。問題は公訴提起前の捜査段階での司法取引である。裁判官の目も弁護人の目もない世界であるから、文字通り闇の世界となる。一般的抽象論であれば、議論が錯綜するから、本件の例で考察する。

疑惑の司法取引

検察と協力共犯者の最初の接点が疑惑そのものである

2名の自称共犯者ハリ・ナダ専務執行役員と大沼敏明理事はどのようにして検察と接点をもったのか。先ず論理的前提として、2名の自称共犯者は共犯者としての自覚がなければならない。しかし、共犯者としての自覚があれば、自分が共犯者であること自体を第三者に対して否定する。証拠となる事実を隠蔽し否定する。何故隠蔽し、否定しなかったのか。それほど4人の犯罪は明白であったのか。

ここですぐ重大な矛盾に逢着する。犯罪が明白なものであれば、内部監査役をはじめ外部監査役、外部監査法人、そしてSECは何故8年間も見落としてきたのか。

そこでどうしても犯罪とされた事実を罪名と犯罪構成要件から検討する必要がある。

有価証券報告書重要事項虚偽記載罪

本件の重要事項は役員報酬事項である

具体的な役員報酬額の決定権者3名(ゴーンとケリーと西川)が決定した報酬額には、特にゴーンについてだけ2重の決定がされたという。各期に現実に受け取る役員報酬の他、ほぼ同額の金額が、将来の退任時に競業避止契約やコンサル契約の際の契約金額として具体的な金額が明示され、書面にされ、その書面をハリ・ナダと大沼が秘書室の金庫の中に秘密に保管するよう命令されていたという。この「将来報酬決定書」の隠蔽行為という点で、ハリ・ナダと大沼は共犯加功が認められたという。

企業会計上、将来の役員報酬なる会計費目はない。役員が将来退任時に受け取る報酬には退職金や功労金があるが、それらは全て勤務年数に従った承認された算定基準があり、それに応じた引当金が準備されている。従ってそれらの規定に準拠しない報酬はそもそも取締役会で承認をうけることができないから、会社債務、すなわち、役員に対する報酬とは如何なる意味でもあり得ない。刑事法学の用語で言えば、不能犯である。

事実の概要 (2)


 公訴時効の無視

 検察の横暴を支える最高裁判例

SECが検察に歩調を合わせず、直近の3年分について行政処分と刑事告発したことには重大な理由がある。それは検察自体が、前半の5年分と後半直近3年分を分離して公訴提起したこととも大きく関係する。刑訴法学者は全員、過去の不明を恥じて黙殺を決め込んでいる。それは前半5年分は公訴時効にかかっているからである。

日本の刑事訴訟判例には恥ずべき判例がある。それは58年前に出された白山丸事件として有名な公訴時効に関する判例である。現実には「海外に逃げても時効は完成しない」との民間知識で世間にひろまっているポピュラー知識である。</p><p>検察はこの最高裁判例を盾に、時効完成事例でも、犯人の海外渡航歴を調査し、時効は完成していない、として無数の事件を立件してきた。これは海外に渡航して仕事をする人々、特に外国人には極めて差別的な結果をもたらした。

ゴーン事件も例外ではない。ゴーンはもともと外国に居住する外国人であるから、むしろ日本にいる期間は少ない。このような立場のゴーンに対し、「海外にいる間は時効は完成しない」として海外滞在期間が時効停止期間として計算された結果、8年前まで遡って起訴された。

この検察の時効停止期間の算定には極めて重大な判例違反と論理違反があるが、例にもれず、学者の一人としてその重大判例違反を指摘するものはいない。判例がそもそも違法判例である上に、さらに違法解釈を重ねたのであるから、法治国との看板はすぐにでも下ろすべきである。

何が判例違反か、から説明する。判例の事案は密出国事犯であり、1回の密出国の後、再入国して密出国が露見して起訴され有罪となった。公訴時効の停止期間は連続した1個の期間であった。ゴーンの場合は入国と出国を繰り返した間歇的な出国期間である。検察は何とこれを単純加算した。明らかに判例事案とは異なる事案に勝手な解釈で、間歇的出国期間を合算した。これだけで明らかに判例違反である。念の為、何故、間歇的出国期間の合算が背理であるかを説明する。それは入国した途端に時効の進行は開始し、過去に時効停止期間の存在があるなしに拘わらず、犯罪既遂時である時効起算点から法定の時効期間で時効が完成するからである。

そもそも白山丸事件判例そのものが違法判例である理由は当時から刑事訴訟法学会で大論争となったことからも明白である。但し、当時は学者の論理的正義は裁判官や検察官の学説・論理無視の横暴に敗北した。当時から、この判決では海外赴任者を不当に差別するとの指摘がなされていた。60年後の現在では明らかに外国人差別の判例としてゴーン事件で脚光を浴びなければならないのだが、あまりにも判例が生まれた時代が古すぎて、だれも具体的に判例の事案と論理を再検討しないため、結論だけが相変わらず一人歩きを続けている。

白山丸事件最高裁判例

直接問題となったのは刑事訴訟法255条1項前段の「犯人が国外にいる場合」が単独で公訴時効停止の要件となるか、それとも、「犯人が国外にいる場合」と「犯人が逃げ隠れている」(場合:この日本語の2文字が存在しないため、最高裁は強引な解釈を強行した。筆者注。)の2つの例文を並列させ、「有効に起訴状の謄本の送達・・ができなかった場合(ここに「場合」があるため、「場合」による形式的区分が可能となり、最高裁の強行解釈がなされた。筆者注。)、時効は、・・・停止する、と解釈するかの判断が分かれた。

最高裁判例は「場合」という術語の存在で2つの並列文と形式的に解釈した。一方、普通の日本人は、「場合」の文字の位置に拘らず、意味を考慮して、起訴状の謄本が到達できない例を2つ掲げ、その場合には時効は停止する、と解釈した。

最高裁の解釈が正しいか、普通の日本人の解釈が正しいかの決め手は、実は前条254条の公訴時効の原則規定の中にある。判り易く言えば、公訴時効の停止するための前提条件は、検察官が公訴の提起ができる段階にあることである。文言では単に、検察官の公訴の提起によって停止するとのみ記述されているが、その時点まで事件が成熟していなければ、公訴時効の停止は発生しない、認められ無いということである。時効制度の本質は一定の客観的事実の存在に対して法的効果を発生させるものである。特に、公訴時効は検察官の公訴権の消滅時効であるから、検察官の客観的な法律行為の存在を要件とする。それが公訴提起に他ならない。

しかし、これだけでは問題は解決しない。それは起訴状の不到達の場合をどうするかの問題である。第254条は到達の場合についてのみ規定して、不到達の場合を記述していない。そこで、第255条で、起訴状の不到達の場合を補充的に規定した。不到達の場合などの例を掲げなければ全く問題がなかったものを、いい加減な不正確な日本語表現で、例示を2つ掲げたために、検察官に悪用され、それをさらに裁判官が強引解釈をして応援した。

しかし問題はこれで終わらなかった。「犯人が国外にいる」だけで、時効が停止する合理的理由を示さねばならない破目になった。これに成功すれば問題はなかったが、最高裁は見事に失敗した。しかし、当時の学説は誰もこの失敗を指摘しなかった。だからこの違法判例は生き残ったのである。

判例は言う。犯人が国外にいれば、国の捜査権が及ばず、捜査が出来ないから、その間、時効が停止するとすることには合理的な理由があるといえる、と。これが真っ赤な謬論であることは少し具体的に考察すれば明らかとなる。因に、白山丸の事案でその欺瞞を指摘しよう。密出国罪は領海を超えた時点で既遂となる。その後、犯人が国外にいて何をしようが犯罪とは関係ないから、捜査の必要もない。領海までの範囲内なら捜査の支障は何もない。他の国内犯はすべて犯人が国外にいても捜査の困難性は何も無い。国外犯の場合には確かに日本の捜査権は及ばないが、最初に当地の刑罰権が適用されるから、むしろ、国権の発動は二重処罰となる。捜査ができなくても不都合は全くない。如何に最高裁の理由づけが

文字通り机上の空論であるかは明白である。

2021年4月5日月曜日

事実の概要 (1)


 人質司法からの脱出

 突然の逮捕

2018年11月19日、ゴーンは突然逮捕された。これを独占生中継したのはテレビ朝日一社だけという一大スクープであった。このあと、朝日新聞の怒涛の如きゴーンの犯罪報道が一週間にわたって一面トップ記事として続いた。事前にしかも相当長期間にわたって準備された官民一体の犯罪報道であった。

世界的大企業のトップが突然、金融商品取引法違反、それも有価証券報告書重要事項虚偽記載罪の容疑で逮捕されるというのは極めて稀であり、そもそもトップ2名だけが逮捕されるという形態そのものが法論理的に有り得ないものであった。ただ、この法理論上の矛盾は未だに専門家によって指摘されていない。これが日本の企業会計論、会社法の実務の実態である。

報道記者は法律に無知無教養だから逮捕手続の詳細を知らない。ゴーンの逮捕には一応の証拠が必要であり、それが会社会計資料であることは罪名から当然である。そして、会社会計資料が、トップ2名の知らない間に検察に任意提供されることは窃盗や犯罪手段による以外には考えられない。これを誤魔化すために用いられたのが耳新しい司法取引であった。報道記者らは一層煙に巻かれてしまった。

 陰謀の発覚

 準備万端の日産幹部とフランス大使の体験。

全く事情が呑み込めなかったゴーンは面会に来たフランス大使に、すぐ日産に弁護人選任を依頼した。フランス大使は直ちに日産を訪問してゴーンの依頼を伝えた。しかし、言下に拒否された。極めて予想外の対応である。会社のトップが逮捕されたのだから、会社は先ず一番に弁護人選任に走るのが常識である。

ここで、フランス大使は残りの取締役らの違背を悟り、直ちにその旨を伝えた。ゴーンはこれで事件の全て、本質を理解した。

事件が残りの取締役らによって仕組まれた陰謀であることは、実は当初から自慢話として報道されていた。それはケリーに対する陰謀である。ケリーは体調不良で、静養のため国外に身を置いていた。東京本社からの出社依頼を当初断っていた。それをなだめすかしてなんとか来日させ、素早く身柄拘束をした、と報道されていた。思えば、既にこの時点でゴーンとケリーは真っ黒な犯罪者で、有罪推定は当然であった。

ゴーンは一貫して事件は検察と謀反取締役らによる陰謀であると主張したが、日本のマスコミは一社として聞く耳を持たなかった。

 被疑事実の明らかな濡れ衣

 検察の独善解釈と沈黙する主務官庁。

金融商品取引法(以下金商法)を一度でも目を通した経験があれば、同法が発行会社を対象とした行政処分の根拠法であることが理解できる。刑事処分は膨大な条文数のうち、有価証券報告書重要事項虚偽記載罪に関する条文は第197条1項と第207条1項1号だけである。前者は提出者を処罰する規定で、後者は虚偽記載行為をした者を処罰する。各事項の記載は各部門の担当者であり、その全体を取締役が最終的に取締役会で確認・承認する手順であるから、このような規制となっている。

問題は重要性の判断基準である。数量的な記載であるから、真実数値との乖離がどの程度なら重要といえるかどうかの判断となる。その重要性の判断は投資家の判断に影響を及ぼす程度でなければならない。本件の具体的事項は役員報酬であり、役員報酬の決定プロセスは公開されている。それによれば、当期の役員報酬の総額は株主総会で決定され、具体的な個々の役員に対する報酬は取締役会の決定によるが、日産では具体的金額の決定はさらに3名の取締役に委任されている。

ゴーンとケリーと西川廣人の3名による合議決定に委ねられている。この手順であれば、役員報酬の総額が株主総会の議決以内であれば、問題を生じない。事実、日産の役員報酬はこの要件を充足してきた。

検察は何をもって虚偽記載としたのか。検察の主張によれば、ゴーンは毎期の公表された役員報酬の他、およそそれと同額のヤミの報酬を受けていたと主張する。但し、その報酬は将来の役員退任時に、競業避止契約や社外コンサル契約の報酬額とするとして、毎期、具体的金額まで決定し、書面にして秘書室金庫に内密に保管させていた、という。

検察は明らかに企業会計の初歩を知らない。役員報酬は会社債務であるから、将来に支払われる債務であっても、発生主義であるから、各期に引当金とともに取締役会の承認を経なければ正式の債務とはならない。そもそも3名の取締役による具体的報酬金額の決定は、あくまで取締役会に提出する支給案であり、取締役会の承認がなければ、金庫の奥に有ろうが机の上にあろうが、秘密であろうがなかろうが全くただの紙切れに過ぎない。

監督官庁・SECをはじめ、内部監査役、外部監査会社の公認会計士が誰一人、長年、虚偽記載を指摘しなかたこと、検察がゴーンを検挙しても同じ構成要件でありながら行政処分の一つでもださなかったこと、沈黙を続けたことは、極めて当然のことである。但し、SECは後に直近3年分については検察と歩調を合わせ、行政処分と刑事告発をした。すでに刑事手続きが着手されているにも拘わらず、刑事告発をした例は寡聞にして知らず。直近3年分には極めて大きなメッセージがこめられており、別途詳論する。