ゴーン事件の概要

上記のリンクリストの
①ページ【ゴーン事件】を見てください
②ページ【ゴーン冤罪事件】を見てください

2021年4月6日火曜日

事実の概要 (3)


司法取引法理

あり得ない共犯、自称共犯の疑惑

日本の司法取引法は検察官司法と批判されてきた日本の刑事司法の本質的欠陥が見事に露呈した法制度である。充分な論理的検討が全くされず、検察の検察による検察のための制度となっている。

協力合意成立の時期は決定的に重要である

共犯事件において、公訴提起後であれば、裁判官の目もあり、弁護人の目もあるから、共犯者の一人が他の共犯者の不利益証言、つまり敵性証人となっても問題はない。検察官も協力合意形成の過程を開示するのに躊躇は何もない。この場合、協力合意者は被告人と呼ばれる。問題は公訴提起前の捜査段階での司法取引である。裁判官の目も弁護人の目もない世界であるから、文字通り闇の世界となる。一般的抽象論であれば、議論が錯綜するから、本件の例で考察する。

疑惑の司法取引

検察と協力共犯者の最初の接点が疑惑そのものである

2名の自称共犯者ハリ・ナダ専務執行役員と大沼敏明理事はどのようにして検察と接点をもったのか。先ず論理的前提として、2名の自称共犯者は共犯者としての自覚がなければならない。しかし、共犯者としての自覚があれば、自分が共犯者であること自体を第三者に対して否定する。証拠となる事実を隠蔽し否定する。何故隠蔽し、否定しなかったのか。それほど4人の犯罪は明白であったのか。

ここですぐ重大な矛盾に逢着する。犯罪が明白なものであれば、内部監査役をはじめ外部監査役、外部監査法人、そしてSECは何故8年間も見落としてきたのか。

そこでどうしても犯罪とされた事実を罪名と犯罪構成要件から検討する必要がある。

有価証券報告書重要事項虚偽記載罪

本件の重要事項は役員報酬事項である

具体的な役員報酬額の決定権者3名(ゴーンとケリーと西川)が決定した報酬額には、特にゴーンについてだけ2重の決定がされたという。各期に現実に受け取る役員報酬の他、ほぼ同額の金額が、将来の退任時に競業避止契約やコンサル契約の際の契約金額として具体的な金額が明示され、書面にされ、その書面をハリ・ナダと大沼が秘書室の金庫の中に秘密に保管するよう命令されていたという。この「将来報酬決定書」の隠蔽行為という点で、ハリ・ナダと大沼は共犯加功が認められたという。

企業会計上、将来の役員報酬なる会計費目はない。役員が将来退任時に受け取る報酬には退職金や功労金があるが、それらは全て勤務年数に従った承認された算定基準があり、それに応じた引当金が準備されている。従ってそれらの規定に準拠しない報酬はそもそも取締役会で承認をうけることができないから、会社債務、すなわち、役員に対する報酬とは如何なる意味でもあり得ない。刑事法学の用語で言えば、不能犯である。